ベストセラー

とても好きで、大好きで、心を何度も揺さぶられた人のあたらしい本。
本でなくてもいい。音楽でもなんでも。
しかもその新作が、世間で高評価を得ているとき。

いざ、触れてみて、あんまり好きじゃないかも?と冷静になってしまうことがある。
そんな自分に、これまでも何度か出会ってきた。

最初、私がおかしいのかなと思う。疲れてるのかなとか、認めたくないほど素晴らしいからなのかな(要するに嫉妬)とか、感情の裏にある「本当のひっかかり」を探そうと努力してみる。私のほうが先に好きになったのに、世間は今更高評価してきてなんなの?みたいな感情なのかな、みたいなことも考える。喉にひっかかっている魚の小骨を探すみたいに、少しだけ丹念に。

でも、骨は見当たらない。
見当たったらどんなにかすっきりする。
でも、見当たらない。

そういうときは、とにかくとても悲しい。喪失感でいっぱいになる。きっと過去に好きだという気持ちをくれたものに対して、そうではない気持ちを抱くことが悲しいから。その人だけでなく、過去の自分にも、背中を向けてしまう行為のような気がしてしまうから。

だけど私の今の気持ちは残念ながら真実で、
その気持ちを胸に、私は私の人生を前に進むしかない。

ひとつ思うのは、何かを苦手とか嫌いとか思ったり、非難したりする場合は、自分の中にもかなり似たような要素がある。しかも本人はそれを絶対に認めたくない。本当にそういうケースが多い。

私は私の人生を前に進むしかない。

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